甘藷地蔵
瀬戸の芋地蔵さん

今から300年ぐらい前、伊予の国、大三島に瀬戸村という村がありました

その瀬戸村に、吉十郎(きちじゅうろう)という人が住んでいました。
吉十郎は働き者で、大変温厚な人でした。
吉十郎には、4人の子供が産まれましたが、
どういうわけか、その子供が4・5歳になると、
次々に死んでしまいました。

大三島は島国であったため、土地も大変やせていました。
そのため、台風や日照りが続くとすぐに作物が枯れてしまい、
村人の暮らしはいつも苦しく、大変困っていました。

薩摩の国、伊集院(いしゅういん)村を通った時のことです。
日も落ちかけましたので、泊まるところを探していた吉十郎は、
親切な村人の家に泊めてもらうことになりました。

その夜は、吉十郎が見たことも聞いたことも無い食べ物を
出されました。
おわんにもりあげられて暖かい湯気を出している食べ物を、
まわりの人がおいしそうに食べているのに誘われて、
吉十郎も、おそるおそる一口食べました。

そのおいしさに吉十郎は大変驚き、
「これは何という食べ物ですか?」と、
村人に尋ねました。

(村人せりふ)
「あなたはよその人だ、まだこれを知らなかったのですね、
 これは芋と言う物です。
 芋は 本当に良い作物で、雨が降っても降らなくてもできます。
 それに、たくさんできますので、このあたりの百姓は大助かりです」

(吉十郎)
「ご主人、この芋を2つ、3つ、分けてください。
 国の百姓の難儀を救ってやりたいのです」

(村人)
「いやいや、それはできません。
 これは、中国から伝わった大切な物です。
 もし、よその人に分けたことが知れたら、重いばつをうけかねません」


吉十郎が何度お願いしても、
主人は芋の種を分けてくれる様子がありません。

その夜、吉十郎は飢饉に苦しんでいる島の人たちのことばかり考えていました。そして、気がつく